お久しぶりです!汗

かなり久しぶりの更新になります…汗

突然なんですが、携帯のサイトを解説しました!


ENDLESS*SILVER
というサイトです。

ブログを休みまくって、何してるんだー!って感じですよね…。
申し訳ないです…汗

今はそっちの方で小説を更新していますので、よかったら覗いて下さい!汗



ブログの方も、頑張るように…します!


ではこの辺で…汗



携帯サイトENDLESS*SILVER






                          小田切 染 デシタ

テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学


“俺たちは裁かれない。誰にも俺たちは裁けない”





































「ねぇ、桜火。桜火は永遠の愛を信じる?」

 この言葉は次の任務で訪れた街で知り合った人が言ったこと。
 男の人だけど、優しく笑う綺麗な人だ。
 俺はその人がすごく好きになった。
 花の様にすごく綺麗。

「俺はもうすぐ死んでしまうけど。愛はずっと生き続けると思うんだ」
「死んでしまう…?」
「そう。だけど悲しくなんてないよ」
「悲しくないの?どうして?俺ならきっと、悲しいのに…」
「悲しくない。自分たちが選んだ道だから」

 また綺麗に笑う。
 何でそんなに幸せそうなんだろう…。

「桜火は?」
「え?」
「桜火は居ないの?そうゆう人」
「…居るよ」
「ホントに?」
「うん。お義父さんとか、一緒に仕事してる人とか」
「クス。可愛いなぁ」
「?」
「それも確かに愛だけど、俺の持ってる愛とは違うみたい」

 違う?

「桜火もきっと分かるよ。誰かを愛することが幸せなことだって」
「…幸せな、こと…」
「うん。多分桜火とこうして話すのは今日が最後になると思うけど…」
「最後?」
「そう。でも悲しむ必要は無いんだよ?俺は幸せだから桜火には喜んで欲しいな」
「でも会えないのは…寂しい」
「そうだね。俺も寂しい。それでもね、やっぱり愛しい人と最後まで一緒なのはこの上ない幸せなんだ」

 分かるようで、分からない想い。
 俺は多分、柊を好きで…多分柊より好きな人は居ないんだと思う。
 火音様も好きだけど、柊のそれとは違う気がするんだ。
 だけど本国で同性愛は死罪。
 普通なら変化すれば済むことなんだけど、俺の場合は違う。
 俺は変わってて、性の変化が出来ないんだ。
 だから尚更俺は醜い。
 異種なんだ。
 それに柊はもう変化出来ないって言ってた。
 そうすると、この先にあるのは罪しかない。
 想いが叶ったとしても(有り得ない話なんだけどね)
 俺が柊に与えられるのは、罪しかないんだ。

「…もう行かなきゃ。呼んでる」
「呼んでる…?」
「聞こえるんだ。俺の事を呼ぶ声。すごく優しい声が」

 そう言うとその人は立ち上がって行ってしまう。
 その後姿はとても綺麗で幸せそう。

 …少し羨ましく思えた。

「…永久(トワ)」

 永久が言ってた言葉。

 “自分たちが選んだ道”

 その意味はまだ良く分からないけど。
 永久の行く先には、きっと望んだものがあるんだと思えた。






















































































































































*************



































「…あんた誰」

 桜火は連れて来なかった。

「本国からの命令でお前たちを捕獲する。大人しくすれば危害は加えない」

 きっと泣くだろうと思ったから。

「…天の犬か」
「もう一人はどこだ」
「あんたには教えないよ」
「…黙れ」
「黙らない。あんたは分かってないからね」

 …不愉快だ。
 俺が何を分かってないという。

「ほら。何も分かってない。そんな顔してる」
「うるさいっ」
「…うるさいのはあんただよ」
「っ…!」

 何なんだ、コイツは。
 さっきから頭にくるような事ばかり言って。
 自分の立場が分かってるのか!?

「俺たちは誰の指図も受けない。それがあんただろうと神だろうと同じだ」
「…ふざけた事を。神は死んだ。お前たちを裁くのは俺たちだ」
「それはどうかな」
「永久」

 突然現れたもう一人。
 二人は寄り添うようにして立っている。

「桜火とはもういいの?」
「うん。ちゃんとサヨナラしてきたから」
「!」

 …やっぱり最近桜火と接していたのはこいつだったのか。
 桜火を連れて来なかったのは正解だったが、今夜も会っていたとは思わなかった。

「あなたでしょ?桜火と一緒に仕事してる人って」
「……それがどうした」
「桜火は探してる二人の片割れが俺だとは気付いてなかったみたいだけど、俺は気付いてた」
「…気付いていたなら何故逃げない」
「今逃げ切っても、きっと追っ手は諦めないと思って」
「それは素直に本国へと戻るという事か?」
「残念だけど、それは違う」

 月明かりの下。
 二人は何も恐れるものは無いかのように笑う。
 …どこか気持ち悪さを覚えた。

「永久は桜火を選んだんだ」
「選んだ?どういう意味だ」
「永久はこの先見知らぬ誰かに追われるくらいなら、桜火にって思ったらしい」
「そう。でも桜火は俺たちを捕まえるには優しすぎる」
「永久と桜火は触れ合いすぎた」

 …確かに桜火はこの永久という奴の話を楽しそうにしていた。
 愛着を持ってしまっていた。
 桜火ならこの二人を逃がしてしまうんじゃないか。
 そんな不安が俺にはあった。
 それが桜火を連れて来なかった理由の一部でもある。

「だからね、あなたにならいいかなって」
「………それが大人しく捕まるという事と、どう違うんだ」
「俺たちの最後を見てもらう」
「桜火は泣いちゃうだろうからね。でもあなたなら大丈夫そう」
「それはエゴだ!お前たちは自分のことしか考えていないっ!そもそもお前たちの片方が変化をすればこんな事にはならなかったはずだ!」
「それじゃダメなんだよ。それじゃ俺たちは俺たちじゃなくなる」
「俺たちはこのままの姿で愛し合った。変わってしまったなら、それは俺たちじゃない」
「その所為で死が与えられるとしてもか!?」
「死なんて恐くない」
「あなたには分からない。死は終わりじゃないんだ」

 頭が痛い。
 イライラする。

「だけど与えられるものが死だとしたら、俺たちは自らの手で死を迎えるだけ」
「!」

 自害する、ということなのか…?

「確かにあんたが言う様に、これはエゴだ」
「桜火はこの事を知ったら泣いてしまう。これは俺たちのエゴの所為」
「だけど俺たちはそれでもこうする事を選んだんだ」
「桜火を悲しませるのは俺も悲しいけれど…」

 分からない。
 俺には、分からない。

「悲しいからあなたは桜火を連れて来なかった。それもエゴだって、分かってる?」
「っ!」
「桜火も優しいけど、あなたも優しいんだね」
「違うっ!…俺は、優しくなんか…っ」
「優しいよ。俺たちのエゴとは違って、守るエゴだ」
「守る…?」
「そうだ。俺たちは桜火を…誰かを傷つけるエゴしかもう持てない。その点では偉いよあんた」
「……」

 俺が優しい?
 守るエゴ?

 …分からない。
 考えたくない…。

「あなたは恐れてる」

 恐れてる?

「誰かを愛する事を」

 この俺が?

「その意味を知る事を」

 意味…だと…?

「そして俺たちを」

 愛する事。
 意味を知る事。

 昔俺が信じてた、想い。

 俺が無くしたもの。

「あんたには愛しい人が居るか?」
「…お前たちに言う義務はない…」

 そんなもの…。
 とうの昔に無くした。

「愛しい人と離れ離れになる苦しみ。あんたにはそれが分からないかもしれない」

 分かる。
 分かるさ。

 俺はその愛を無くしたんだから。

「俺たちはもう苦しみたくない」
「だからこの道を選んだんだ」

 馬鹿だ。

「その先に、悲しみはない」

 こいつら二人…救いようのない馬鹿だ。

「だから」

 …馬鹿だ。

「幸せなんだ」













































































































 馬鹿だ。





 愛を語るこいつらも。





 その二人を恐れる俺も。





























































































































































































「何で!?どうして言ってくれなかったの!?」
「………」

 案の定、桜火は泣いてしまった。

 ポロポロと涙を流して、とても悲しそうに。

「何で永久が…っ」

 結局俺が泣かせまいとしてした行動も、全く意味がなかった。
 あの二人が自害したことなんて、よく考えればすぐに耳に入る話だったんだ。

「今日で最後って…そんな意味だなんて…っ…分からなかった…っ」
「……俺だって分からなかった」

 あいつらが語った愛の意味を。
 もう俺には遠すぎる存在で、忘れてしまった。

「…永久…っ」

 ポロポロ。ポロポロ。
 その涙は綺麗過ぎる。

 引き込まれそうだ。

「………もう泣くな」

 お前の涙って、舐めたら甘そうだな…。

「…泣くんじゃない…」

 指で拭き取った涙。
 思わず舐めそうになったけど止めておいた。

「…………泣かないでくれ…」

 俺まで泣いてしまいそうだから。


























































































「桜火。あの二人の名前知ってるか?」
「…永久だけしか知らない」
「もう片方の名前、亜衣っていうらしい」
「あ…い?」
「字は違うけど、地上での“愛”と同じ発音だ」





































































































***結果報告***

 罪人、亜衣及び永久捕獲任務。
 両者自害により、中止。




テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学








“柊、君は綺麗だね”







 思い出したくない。






“僕は変化するけど、本当にそれでいいの?”






 思い出したくない。






“もし次に愛しい人が出来た時、その相手が異性ならいいけど”






 思い出したくない。






“同性なら”






 思い出したくない。






“その愛は”






 思い出したく、ない…。






“罪だ”






 違う。
 俺には、お前以外なんて要らない。
 お前にも俺しか要らないはずなんだ。
 それなのに。
 どうして。


 何でそんな悲しい事を言うんだ。


























































































































「氷柱」

 そう。
 その名前だ。

「あぁ、柊か。どうしたの、君が庭園に来るなんて珍しい」

 銀糸の髪で、蒼い瞳が凄く綺麗だった。

「お前に報告がある」
「なに?」
「お前と同じ士官学校に入る事が決まった」
「………クスクス」
「な、なんだよ。急に笑って…」
「だって。柊ってば僕と同じ進み方するんだもん」
「う、うるさいっ」
「照れないでよ」
「照れてない!」
「僕は嬉しいのになぁ」

 確かに俺は氷柱と同じ進み方を選んだ。
 それが同じ時間を共有するのには一番だと思ったからだ。
 それに俺は士官になるつもりでもあった。

「また一緒だね」
「…ああ」

 氷柱から見れば、俺は子供なのかもしれない。
 天使は生まれて約50年は幼少の姿でいる。
 それから徐々に成人の姿へと変化するのだが、その頃の俺は成人したてだったんだ。
 地上の人間の年齢で言えば、17くらいの容姿。
 氷柱はすでに20代の容姿だった。

「ずっと一緒だといいね」
「ずっと一緒だ」
「ずっと?」
「ああ」
「そっか…ずっと、だね」

 今思えばその頃からかもしれない。
 少しずつ、少しずつ。
 氷柱の中の何かが変わっていたのは。



































































「本当にそれでいいの?」
「ああ」
「もし次に愛しい人が出来た時、その相手が異性ならいいけど」
「そんなもの存在しないっ」
「同性ならその愛は罪だ」
「ある訳が無いっ」
「本当に、そうなの?」
「本当だ!」

 これは氷柱が変化をする夜の出来事。

「…じゃあ柊に僕を捧げよう」

 まだ全てを信じていた俺。

「…好きだよ、柊」

 そう言って交わした口付けは。
 とても冷たかった。

「ずっと一緒だ」
















































































































































 それから間もない頃だった。


 地上へと任務で下りた氷柱が“死んだ”と聞いたのは。


 どうやって死んだのか。


 俺は聞く勇気がなかったから今でも知らない。


 ただ。


 もう氷柱は居ない。


 その事だけが、深く突き刺さった。
































































































***********









































『次の任務が決まった』

 そんな本部からの通信の音で俺は目を覚ました。
 ……どうやら眠っていたらしい。
 視界には桜火が通信機の前に座っているのが見えた。

 っていうか、もう次の任務か…。
 あれから3日も経っていないっていうのに。

『天界から逃げた天使二名の捕獲を言い渡す』

 天界から逃げた、か。
 一体何をしたんだか…。

『罪状は同性による性交』
「!」
『詳しい事は書面にして送信する。以上』

−ピッ

「……………」
「あ、柊…起きたんだ」
「…あ、ああ」




 嫌な。



























 予感がする…。





















テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学






*****天界*****














「それで、桜火の胸の傷は消せたのかい?」
『当たり前です!傷あと一つも残してません!!』

 おやおや。
 柊が珍しく激昂しているな。
 
「という事は、傷を舐めたということだね。…卑猥だな」
『や、そ、れは、その…(多汗)』
「分かってる分かってる。傷を早急に癒すには呪文を唱えるよりも直接舐めた方が癒えが早いって事くらい。そんなに照れるんじゃないよ(笑)」
『て、照れてませんっ!(照)』

 顔が真っ赤。
 嘘が苦手なタイプだな。桜火と一緒で。

「そこに変な感情があっては考えものだしね」
『同性愛は死罪です!そんな感情、ありませんっ』
「例え話だよ。そう怒るな」
『っ!………すみません…(汗)』
「それで、桜火は今どうしてるんだ?顔が見えないが」

 通信画面の中には柊一人。
 後は部屋の様子が分かるだけで何もない。

『桜火なら今は眠ってます。煉真に催眠の呪文を使われたようで、一応解いたんですが』
「少しまだ効いているってことか」
『はい』
「他に何か変わった事は?」
『いえ、特には。ですが俺も遅れて現場に着いたんでハッキリとは言えないです』
「そう」

 …まだ煉真はそう深くは桜火に接触していない、という事か…?

『あ、あの犀刃様』
「?」
『通信の最中で申し訳ないんですが…(汗)』
「何かな」
『その…桜火が起きたようなんで、そっちに行っても…』
「!」

 これは驚いた。
 まるで甲斐甲斐しく世話をする母猫のようだ。
 感情は無いだなんて言っていたが、下手をすると…。

『犀刃様?(汗)』
「いいよ。行きなさい。火音には私から報告しておくから」
『はい。では失礼しますっ』

 −ピッ

「……隠れてないで、出てきたらどうなんですか。火音」
「…通信はもう終わったのか?」
「ええ」

 ったく。
 桜火の傷を見たくなくて隠れてたなんて。
 他の者が知ったら笑いますよ。

「だいたい桜火は通信最中には眠ってたそうじゃないですか。隠れる必要がどこにあるんです」
「いや…父親として複雑な心境で…」
「何がです」
「………」
「“傷を舐めた”事ですか?」
「っ!」

 図星、か。

「舐めることなんて、そう珍しい事でもないでしょう」
「それはそうだが…」
「火音だってあるでしょう」
「私はないっ」
「……」
「な、なんだ、いきなり黙って…」
「いえ…」

 ちょっと意外だったもので。
 今まで生きてきて、傷を舐めて治癒したことが無いとは。
 血が嫌いな火音にしては、意外すぎる。

 …いや。
 嫌いだからこそ、なのか?

「私はありますよ」
「そんな事知ってる」
「そうですか?」
「ああっ」

 でも知らないでしょう?

 私がそうやって治癒したのは火音だけ。
 ということ。

「クス」
「何がおかしいんだ」
「いえ、別に?」
「……気味悪いな(汗)」

 じゃあ私が傷を負った時。
 その時はあなたに癒してもらいましょうかね。

 だってほら。

 他人の血を舐める、なんて。

 私にしては、どう考えても卑猥だ。











































































































「おい」

 んー…。

「おいっ」

 …誰かの声…。
 柊の声がする…。

「おいっ!」

 ピシッ!

「!いった…!!」
「やっと起きたか。この馬鹿」
「柊…なにもデコピンしなくても…」

 おでこが凄くヒリヒリする…。(涙)

「うるさい。お前が勝手な行動ばかりするからだっ」
「う…」

 怒ってる…。

「お前を集会所から連れて帰るの大変だったんだぞ!」(←嘘です)
「ご、ごめん…(汗)」
「ったく…」
「…あ、あの」
「何だ」
「…どうして俺が集会所に居る事…」

 俺、内緒で行ったはずなのに…。

「居なくなったお前を探すことなんて、簡単なことだ」
「…そう、ですか…(汗)」

 やっぱり相当怒ってる…。

「しかも駆けつけてみればお前は眠らされてるし、怪我してるし…心臓に悪い事、この上ない」
「ごめん…」

 そういえば俺、あの時急に眠くなったんだっけ。
 今考えれば、あれは呪文だったのかな…?

「……あれ?」
「…どうした」
「…傷、無くなってる」

 あんなに血が出てたのに。
 何一つ、痕がない。

「あんなもの、俺が消してやった」
「…え?」
「不愉快だ。傷を付けられたお前もあいつも」

 あいつって、煉真の事…だよね?

「だから消してやった」
「そうなんだ…」

 柊が…消してくれた…。

「でも凄いね。痕一つ残らないなんて。俺だったら、痕残しちゃうかも」
「舐めれば簡単だ。そんなもの」
「へぇーそっかぁ……」

 ん?
 待って。

「柊…」
「?」
「舐めたの…?」
「っ!!(←バレたくなかった)」

 え、なんで真っ赤になるの…?(汗)

「う、うるさいっ!お前はまだしばらく寝てろ!!」
「わっ」

 そう言うと強引に俺に布団を掛ける柊。
 ……さっき起こしたのは柊のくせに…。

「俺は隣りの部屋に居るっ」
「あ、待って」
「な、何だよ…」
「その…ありがと。助けてくれて」

 起きた時に柊が側に居て、嬉しかった。

「……パートナーなんだ、仕方ないだろ…」

 最初に聞こえたのが、柊の声で安心した。

「うん。…でも、ありがと」
「…もういいから寝ろっ」
「うん」










 嬉しかったんだ。





































***結果報告***

 重罪人煉真捕獲任務。
 柊及び桜火滞在地域離脱により失敗。













テーマ:自作BL小説 - ジャンル:小説・文学




「あの野郎っ!逃げやがったなっ!!」




 そう叫んだのは少し前の事。
 そろそろ反省したかと思って様子を見に行ってみると、そこには桜火は居なかった。
 よく考えてみれば、縛解の呪文は桜火の得意分野。
 俺とした事が失態だ。

「…とにかく見つけて、こっ酷く怒鳴ってやる!」

 あいつ…俺の目の届かない所で何してるんだ。
 全く。

























































「どう?気に入ってくれた?」
「っ…」

 胸を襲う激しい痛み。
 熱くて今にも叫びそう…。

「その印はね、少し違うけど達花にもあげたもの」

 しかめた目を開いて自分の胸板を見てみると、そこは血で濡れていて見たこともない傷が出来ていた。

「これは…っ」
「達花のとは違って僕と繋ぐものはないけど、綺麗でしょ。その印」
「…っ…」
「気に入った子にしかあげないものだよ」

 痛い。
 そんなに深い傷じゃないのに、血が…止まらない。
 天使は再生能力に長けているはずなのに…何で…?

「血が止まるまで、多少時間が掛かりますよ」
「!」

 突然下りてきた一人が傷を見てそう告げる。
 その顔はニッコリと微笑んでいてこの場に似つかわしくない。

「…誰…っ」
「達花」
「ぇ…」
「名前です。今、聞いたでしょう?」

 また微笑む。
 何で…笑ってるの…?

「そして桜火が探してる人もここに居る」
「!」

 何で名前を…。
 それに何でその事知って…。

「僕が呼んだから」

 その言葉と同時にシャンデリアから下りてくるもう一人の人影。
 その人影に俺は見覚えが、あった。

「僕がそう望んだから」
「あなたは…昼間の…っ」
「僕が桜火の探し人だから」
「違うっ」

 俺が探してるのは赤髪で金眼の…。

「あぁ、そうか」
「…?」
「今の姿じゃ、分からないのも無理ない」

 そう言うとその人は綺麗に笑う。
 俺に傷を付けた事なんて、忘れたみたいに。

「“脅威は退き、平穏が再来した。我はもう何者にも侵されない。本来の姿を取り戻す聖者なり”」

 呪文…!?
 この人…天使なの…!?

「どう?探してたんでしょう、僕を」
「赤髪の…金眼…」
「そう。僕が“煉真”」
「……嘘…」

 昼間見た時は、天使だって全然気が付かなかった…。
 普通なら天使が同じ街に来ただけで気付くのに…。

「僕は特別だから。気配を消すことなんて、簡単なことだよ」
「だから桜火も気が付かなかった」
「そう、だから桜火のパートナーも僕に気が付かない」
「彼は優秀だから少し心配だったんですが、問題なかったみたいですね」
「あ。だからって桜火が優秀じゃないっていう意味じゃないからね」

 頭が混乱しちゃって上手く思考が回らない。
 何がどうなって、こうなったのか。
 昼間に助けてもらった人が、煉真?
 じゃあ俺はうまく騙されたってこと??

「悪く言えば、そうかもしれないね」
「!」

 思考が…読まれてる…?

「昼間会った時に教えてあげたでしょ?僕は他人の考えが読めるって」
「冗談じゃ…なかったの…?」
「うん」

 驚いた。
 そんな能力、天使にも地上の人間にもあるって聞いたことなんてなかったから。

「でも騙したつもりはないんだ」
「……」
「桜火が僕を探してる。それが嬉しかった。だからここを教えたんだ」
「ここを発つ前に現れてくれて良かったですよ」
「もう少しでここを出る所だったからね」
「……っ」

 とにかく…今はこの人を捕獲することに集中しなくちゃ…。
 任務がある事を忘れちゃいけない…!

「無理だよ。桜火に僕は捕まえられない」
「!」

 …やっぱり、読まれてる…。
 嘘じゃ、ないんだ…。

「クス。…嘘じゃないよ」
「っ…!」

 どうしよう。
 思考を読まれちゃ捕獲するのは難しい…。
 このままだと逃がしちゃう…!

「…可愛いなぁ。桜火は」
「…何をふざけた事を…っ」
「ふざけてなんかないよ。本心から言ってる」
「そんな事言われても、嬉しくないっ」
「昼間会った時から桜火の声は聞こえてた。僕のこと綺麗って思ってたよね」
「…思ってない…っ」
「嘘。思ってたはずだ」
「違うっ…」

 俺は…。

「でも今は恐がってる。昼間の時よりも」
「それは煉真が急に印なんて付けるからですよ」
「そうかなぁ」
「少なくとも原因の一つではあります」
「クス。…でもそれもいいかもね。綺麗って思われるよりも、恐いって思われる方が強い気がする」

 恐い。
 それは強い、感情。

「桜火」
「!」
「僕を追いかけて」

 さっきまで離れた場所に居たはずなのに。
 何で今、目の前に…?

 息が触れ合って、酸欠しそう。

「子犬が母親を探すように」

 止めて。

「虫が明かりを求めて彷徨うように」

 止めてっ。

「愛しい人を、求めるように」

 やだっ!

「僕を」

 この声に侵されて頭がパンクしそう…っ!

「さがして」

 その言葉と同時に視界が揺らぎ始める。
 ぼやけて煉真の顔も良く見えない。
 なに、この感じ。
 
 凄く…眠い…。















































































































































「桜火!!」

 そう叫んで飛び込んだ先では、予想も付かない状況が広がっていた。
 男が二人。
 内一人は両手で桜火を抱えている。

「!」
「…君か」
「誰だお前たちは…!桜火を離せっ」
「そう怒らないで下さい。桜火に危害を加える気なんてありませんよ」

 桜火を抱えた男が俺を見て笑う。
 何故かその笑顔が気に障ってしょうがない。

「危害を加える気はないだと!?じゃあ、その血は一体何なんだ!!」

 血の跡が桜火の胸から腹の辺りまで広がっている。
 桜火が怪我をしているのは明白だ。

「これは僕から桜火への贈り物だよ」
「!お前…っ」
「おや。さすがだね。もう気付いたんだ」
「…当たり前だ。赤髪で金眼といったら煉真、あんたの事しか思い当たらない…っ」

 早く桜火の手当てをしないと…っ。

「でも頭の中は桜火の事でいっぱいみたいだね」
「!」
「大丈夫。眠ってるだけだから、安心していいよ」

 …思考を…読んでいるのか…?

「正解。天界で君が有名なのも理解出来るよ」
「状況の把握が上手ですね」

 やっぱり!

「でも僕はここで君と戦うつもりも、捕まるつもりも全くない」
「桜火をどうするつもりだ!」
「そうだなぁ…連れて行きたい気もあるけど、僕は追われる方が魅力的だと思うんだよね」
「魅力的…だと…?」
「うん。愛を感じるからね」
「馬鹿か!愛などそこにある訳がない!!」
「それは君が決める事じゃない。僕と桜火が決める事だ」
「っ!!」
「だけど今回は素直に君に返してあげる」
「いいんですか?煉真」
「うん。だって、彼が可哀相だから」

 可哀相!?
 この俺が!?

「…うーん…気付いていない、といった所かな」
「何がだ!」
「教えないよ。自分で気付きな。僕は気付いてるもの。桜火の存在を」
「……」

 意味が分からない。
 何が言いたいんだっ。

「この世界でもっとも強く美しく、そして醜いもの」
「煉真、そろそろ時間です」
「分かった。達花、桜火を返してあげて」
「はい」

 達花と呼ばれた男は俺の方へと近づくと、桜火の体をゆっくりと地面へと下ろす。
 確かに桜火は眠っているようだったが、胸の傷は痛々しく血で濡れていた。

「眠っているせいか血の止まりが通常より遅いようです。早く血を止めてあげるといいですよ」
「!」

 そんな事言われなくたって分かってる!
 俺は指示されるほど、馬鹿じゃない!!

「…強い感情だね。火のようだ」
「行きましょう、煉真」
「うん」

 任務の事は分かってる。
 だけど今の俺には桜火を放っておく気にはなれなかった。

「くそ…っ」

 …失態続きだ。

「こんな傷…」

 血を止めるだけじゃ気が済まない。
 傷が付いてるだけでも腹が立つ。
 俺が居ない所で怪我するなんて、ましてや傷を付けられるなんて。
 そんなの許さない。

「…消してやる。こんな傷」














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